化学物質過敏症は専門医で診断できる!
化学物質過敏症は一般の検査では異常が出ない
化学物質過敏症は、病院の通常の検査では異常が出ません。
その上、医師の間でも化学物質過敏症という病名自体がほとんど知られていないのです。
中には、化学物質過敏症だと分かるまでに何10件も病院を渡り歩いたという人もいるそうです。
私も何件か病院に行きましたが、精神的なものと勘違いされてしまいました。
でも、安心してください。
化学物質過敏症は、専門医に行けば診断してくれます!
専門医で行われている検査法や診断方法は、一般の病院で行われている内容とはかなり異なります。
専門医では、実際にどういった検査を行っているのか?
また、実際に私が専門医を受診して良かった点、悪かった点についても書きました。
外出困難な化学物質過敏症の患者さんにとっては、専門医を受診するのもリスクが伴います。
自分にとって、本当に専門医での診断は必要なのか?
これから専門医の診断を受けようか迷っている方は、参考にしてみてください。
私は2010年に、北里研究所病院の宮田幹夫先生に診てもらいました。
(現在では、宮田先生は北里研究所病院での診療は行っていないようです。)
専門医での診断法は、問診と自律神経の機能検査が中心
化学物質過敏症の専門医での診断方法は、問診と自律神経の機能検査が中心になります。
- ❶ 一般診察での検査を行い、他の病気ではないことを確認する
- ❷ 問診と自律神経や脳のはたらきを調べる検査を中心に、必要に応じて原因と思われる化学物質を嗅いで症状を再現し、原因物質を特定する
問診や検査結果から総合的に判断し、はじめて化学物質過敏症であると診断されます。
他の病気との明らかな違いは、少ない量の化学物質に反応して体調が悪くなること、患者さんの感覚が異常に敏感になっていることです。
一般診察で他の病気ではないことを確認する
まずはじめに、一般診察で他の病気ではないことを確認します。
尿検査、血液検査、生化学検査、心電図、血圧測定、体温測定などの検査を行います。
原因をつきとめるため、問診で生活環境について聞きます
専門医が問診で、家庭や職場などの生活環境について聞き出します。
何に反応しているのか、どうしてそんなに過敏に反応するようになったのかを知るために、転居歴、生活習慣、化学物質の使用量、接触回数、時間、食事内容などを詳しく聞きます。
化学物質過敏症になると自律神経や脳のはたらきに影響が出る?
化学物質過敏症になると神経が乱れ、自律神経失調症のようなよく分からない症状で悩まされるようになります。
そのため、神経系の機能の異常を確認する目的で、「自律神経機能検査」と「脳神経機能検査」を行います。
私は、「脳神経機能検査」の「眼球運動検査」で異常が見つかり、「化学物質過敏症」と診断されました。
この検査で異常が見つかる人は、かなりたくさんいるようです。
自律神経のはたらきを調べる自律神経機能検査
瞳孔の検査
瞳孔は、明るいところでは縮み、暗いところでは広がる性質を持っています。
自律神経の副交感神経の働きによって縮み、交感神経の働きで広がります。
殺虫剤などの有機リン系の薬剤が原因の場合、瞳孔が縮み、塗料などのトルエンが原因の場合は暗いところで大きくなる傾向があります。
調節検査
目のピント合わせは、副交感神経を中心に自律神経でコントロールされています。
有機リン系の薬剤が原因の場合、ピント合わせがうまくできないことがあります。
脳のはたらきを調べる脳神経機能検査
眼球運動検査
脳から目への神経経路に異常があると、眼球が目の前で動くものを追う運動に異常が起こり、目標物を上手に追えず、特に垂直方向にガタガタした動きになります。
異常が見つかる確率がかなり高く、自覚症状がない患者さんの家族でも異常が見つかることもあります。
コントラスト感度検査
縞模様を見て、白と黒との明暗比のコントラストをどの程度で見分けられるかを確認することによって、脳のものを見る視覚中枢の異常を調べます。
通常の視力検査では正常でも、この検査でかなりの異常が見つかります。
脳の画像検査(SPECT検査)
一般的なCTやMRIでは分からない、脳のはたらきを調べることができます。
この検査で化学物質過敏症の人の大脳を見ると、側頭葉・前頭葉の血液が通りにくくなっていることがあります。
化学物質は、血液をドロドロにして血流を悪くすると聞いたことがありますが、どうやら本当のようですね。
その他の検査法
その他には、24時間心電図をつけて自律神経の異常を調べる検査や、鼻の粘膜を切り取る免疫の検査、近赤外線で脳の血流を調べる検査もあります。
原因物質を嗅いで症状を再現し、特定するブーステスト
化学物質過敏症の症状は、化学物質に体が慣れてしまうと症状が現れにくくなるので、原因物質を除去した状態で検査を行う必要があります。
なぜ、化学物質に体が慣れてしまうと症状が現れにくくなるのかについては、化学物質過敏症 発症のメカニズムを参考にしてください。
正確な検査を行うため、化学物質過敏症の原因となる化学物質や電磁波などの影響のないガラス張りのクリーンルームで行われます。
原因物質と考えられる化学物質を少ない量から吸入し、症状が現れたら原因物質が特定できます。
さらに、原因物質を取り除くことで症状が起きなくなること、
再び原因物質を嗅ぐことで症状が現れること、
偽薬で反応が出ないことを確認して、はじめて原因物質だと証明されます。
アメリカでは、化学物質や食べ物の溶液を注射して症状を調べる「皮内テスト」も行っています。
専門医で行う化学物質過敏症の血液検査
化学物質過敏症になると栄養が不足します
化学物質過敏症になると、解毒によってビタミンやミネラルなどの栄養が不足するので、栄養状態を調べる検査を行います。
血液中の化学物質を調べることができます
症状を引き起こした可能性が高い化学物質が血液中に含まれているかの検査を行います。
免疫異常を調べる検査
化学物質過敏症の場合、アレルギーのように免疫に異常が見られることがあるので、血液中のIgG(免疫グロブリンG)やIgE(免疫グロブリンE)などの抗体を検査します。
髪の毛から重金属やミネラルの量が分かる
「毛髪分析」で体内に蓄積した有害ミネラル(重金属)の量や必須ミネラルの過不足を調べることができます。
自分で化学物質過敏症かどうかを調べるには?
専門医の受診が難しい場合、化学物質過敏症であるかどうかをある程度自分で判断することもできます。
化学物質過敏症になると、決まった臭いや食べ物に好き嫌いがあることが多いので、好きなものと嫌いなものをチェックして、生活環境から取り除いた時の症状の変化を調べます。
家や職場から離れた後の症状の変化を調べることも重要です。
「嫌いなものは分かるけど、どうして好きなものが化学物質過敏症の原因になるの?」
と不思議に思う方もいらっしゃると思いますが、原因物質に体が慣れてしまうと、かえって心地よく感じることがあるのです。
タバコを吸う人が喫煙によって快感を得るのと同じ原理ですが、詳しくは、化学物質過敏症 発症のメカニズムに書かれています。
好き嫌いのあるものを生活環境から取り除いた場合や、家や職場から離れた場合に症状が変化すれば、化学物質過敏症の可能性があります。
化学物質過敏症の詳しいチェック項目については、化学物質過敏症自己診断チェックリストをご覧ください。
専門医の診断を受けてよかった点
- 専門医のお墨付きをもらえるので周りの人の理解が得やすい
- 他の病気ではないことが分かれば安心できる
- 原因が分かれば対処法を考えられる
- 専門医での治療法を教えてくれる
専門医の診断を受けることの一番のメリットは、専門医のお墨付きをもらえるので、家族や友人の理解を得られやすいことだと思います。
周りの人に専門医に診断されたと伝えることで、「気のせい」「精神的なもの」と言われることがなくなりました。
私の場合は、他の病気ではないことが分かったので安心できました。
体調不良の原因がはっきりしたことも大きな収穫でした。
原因が分からずに体調が悪いというのは気持ちが悪いものです。
原因が分かれば、どう対処したら良いのかも見えてきます。
あとは、専門医での治療法を教えてもらえることもメリットだと思います。
私の場合は、専門書を読んでいたので真新しい情報はあまりありませんでしたが、現時点で専門医が行っている治療法が分かるので、情報収集として良いと思います。
また、化学物質過敏症の人は、周りの人の理解が得られにくく、孤独に陥っている場合が多いので、専門医に自分の辛い気持ちを理解してもらえて気持ちが楽になったという話をよく聞きます。
私は、医者には良い治療法を提供してもらうことを一番に望むので、その点に関してはあまりメリットを感じませんでしたが、患者さんの中には、専門医に理解してもらうことで、かなり救われたという人もいるようです。
専門医の診断を受けて悪かった点
- 専門医が少ないので、受診するまでに時間がかかる
- 専門医が少ないので、病院が家から遠いと行くだけで大変
- 総合病院の場合だと病院内で浴びる化学物質のリスクが高い
- 保険が効かない検査もあるのでお金がかかる
- 診断されたものの確実な治療法がない
日本で化学物質過敏症を診断してくれる専門医は本当に少ないので、受診するまでに半年も待たなければいけませんでした。
さらに、病院が家の近くにはなかったので、高速を使って往復5時間近くかかり、行くだけで大変でした。
また、私の受診した北里研究所病院は総合病院だったので、病院内の化学物質の臭いがかなりきつかったです。
中には症状が悪化してしまう人もいると思います。
保険が効かない検査もあったのでお金もかかりました。
診断されたけど確実な治療法がなかったのが残念でした。
これから専門医の診断を受けたいと思っている方は、これらのリスクを覚悟の上で受診をすることをおすすめします。
専門医の診断を受けるかどうかは、メリットとデメリットを理解して判断する
病気になった時、メジャーで確実な治療法のある病気なら、専門医の診断を受けて適切な治療を受けることは必要不可欠だと思います。
でも、化学物質過敏症のような、診断方法も複雑で確実な治療法のない病気は、専門医の診断を受けたからといって、必ずしも治るとは限りません。
自分が本当に化学物質過敏症なのか、他の病気にかかっていないかを確実に知りたい場合や、職場などで診断書が必要な場合は受ける意味があると思います。
多くの外出困難な化学物質過敏症の患者さんにとって、専門医を受診することはリスクが伴うものです。
専門医の診断を受けるかどうかは、メリットとデメリットを理解して判断することが重要だと思います。
参考文献:
- ・石川 哲(著) 宮田 幹夫(著). あなたも化学物質過敏症?―暮らしにひそむ環境汚染 (健康双書). 農山漁村文化協会. 1993. 195p.
- ・石川 哲(著) 宮田 幹夫(著). 化学物質過敏症―ここまできた診断・治療・予防法 (生命と環境21). かもがわ出版. 1999. 169p
- ・石川 哲(著). 化学物質過敏症ってどんな病気―からだから化学物質「農薬・食品添加物」を除去する健康回復法. 合同出版. 1993. 138p.
- ・宮田 幹夫(著). 化学物質過敏症―忍び寄る現代病の早期発見と治療. 保健同人社 . 2001. 71p.
- ・加藤 やすこ(著) 出村守(監修). 電磁波・化学物質過敏症対策―克服するためのアドバイス (プロブレムQ&A). 緑風出版 . 2004. 185p
- ・能登 春男(著) 能登 あきこ(著). 明日なき汚染 環境ホルモンとダイオキシンの家―シックハウスがまねく化学物質過敏症とキレる子どもたち. 集英社 . 1999. 245p
- ・宮田 秀明(著). 体内複合汚染―家族の安全と健康、どうすれば守れるの?. 朝日ソノラマ . 2000. 171p
- ・化学物質過敏症支援センター.http://www.cssc.jp.(2018-12-23).
- ・フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』.https://ja.wikipedia.org/wiki/化学物質過敏症(2018-12-23).